第7回 〜ムニエ氏のバッハ……そして香水〜
先日、パリ7区のある教会で「アーツ国際セミナーin Paris」の教授のお一人、フランスチェロ界の重鎮であるアラン・ムニエ氏の演奏会に伺いました。ムニエ氏はフレンチエレガンスを絵に描いたような優雅な紳士。若い演奏家の活動を応援するためのさまざまな企画にも携わっていらして、とても現代的で柔軟な思考の持ち主です。
ムニエ氏のバッハを聴いている間、現実の世界を抜け出して、光の降りそそぐ異次元に浮遊するような、不思議な感覚を味わいました。温かい音色は「神の声」というよりも、慈しむような、包まれるような、いたわるような……疲れた人の肩に手を置きやさしい言葉をかけるような、人間味にあふれたものでした。
フランスの香水ブランド「アニック・グータル」には、ムニエ氏をイメージして創作された香水があるのです。「グランタムール(最高の愛)」は、奥様に毎週白い花束のプレゼントを欠かさなかった氏へ、「サーブル(砂)」は彼らのコルシカ島でのヴァカンスの記憶……。映画のようなシーンに、ムニエ氏の音色の静けさやその人間性が自然に重なります。
ムニエ氏が自らの音楽観を惜しみなく語るインタヴューも、ぜひ合わせてご覧ください。
http://www.a-cordes.com/#!20130704alain-meunier/ctas
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船越清佳 Sayaka Funakoshi ピアニスト、音楽ライター